保険法務
損害保険の意義
保険の仕組み
保険とは、簡単に言えば、経済的な損失を被る危険があると考える者が、資金を出し合って基金を作り、実際に、その危険が現実化して、経済的な損失を被った場合に、その基金から損失を補てんしてもらうことにより、危険を回避する仕組みということができます。
損害保険などの各種保険は、現代社会において、安心して社会生活を送るために、企業や個人にとって、必要不可欠なものであることは疑いがありません。
自動車保険や傷害保険、火災保険、生命保険などが頭に浮かぶと思いますが、保険の種類は、社会の複雑化に伴い、非常に多種多様となっており、近年は、あらゆるものに保険が付いていると言っても過言ではない状況にあります。
保険の公益性
保険業は、基本的には、保険契約者との間で、保険契約の締結を行う私的な事業ですが、社会生活上のさまざまな危険に対する補償を提供し、現代社会における国民生活や国民経済の基盤となるという意味で、公共性をもっています。
保険会社としては、この公共性を有する役割を果たすため、迅速かつ親身な保険金の支払いという要請と、適正な保険金の支払い、特に、いわゆるモラルリスク(保険金詐欺)の排除という2つの一見相反する目標を達成する必要があります。
横浜みなとみらい法律事務所では、国内大手損害保険会社からご相談を受け、保険会社側の代理人として、損害賠償請求や保険金請求に関する示談交渉、訴訟対応等を行っているほか、保険法令や保険約款に関する解釈、運用についての助言を行っております。
こうした業務にあたっては、単に、保険金の支払額を削減することのみに注力するのではなく、自分たちの発言、行動が、保険制度の健全な維持、発展に寄与し、ひいては、国民生活、国民経済へ影響を与えるという観点を忘れてはならないと考えています。
約款・裁判例の重要性
保険契約における約款・裁判例の位置づけ
保険契約に関する私法規定は、明治32年制定の商法が、100年を超える間、ほとんど改正されないまま適用されてきました。
商法の規定は、多くが任意規定であり、その間、世界的な保険大国のひとつである我が国の保険実務は、法律規定とは異なる内容であることの多い保険約款に基づき、規律のシステムを発展させてきました。
また、損害賠償の範囲を規定する民法第709条等は、具体的な内容をその解釈に委ねているといえ、損害保険を取り巻く法律問題の解決にあたっては、保険約款の理解、裁判例の知識が必須といえる状況にあるといえます。
保険法の成立
その後、平成20年に保険法が制定され、商法の時代後れの規定は、現代化され、多くの規定が保険契約者側に不利益な特約を許さない片面的強行規定とされ、法律規定が保険契約上の権利義務を直接規律する局面が増加しました。
しかしながら、保険法の規定も、各種保険に共通する基本的な事項に限られていますので、現代社会において、多種多様となった保険を広くカバーすることはできておらず、今後とも、保険約款の理解や裁判例の知識が重要な意味を持つという状況に変化はないものと思います。
横浜みなとみらい法律事務所では、法律問題に関する最後の砦としての自覚を持ち、日々の業務において、裁判例を丹念に調査するのみならず、定期的に勉強会を開き、各弁護士で協議をし、損害賠償、保険金支払に関する知識を共有、向上させるべく研鑽を積んでいます。
モラルリスク排除に向けた取り組み
立証責任について
保険金請求訴訟においては、事故の偶然性(偶発性)の立証責任を意識して、主張、立証していくことが特に重要になります。
この点、車両保険金の請求については、平成18年から平成19年にかけて、複数の最高裁判決が出され、注目を集めました。
今後の課題
近年、人身傷害保険の付保率が急速に高まっておりますが、人身傷害保険の請求については、事故の偶然性(偶発性)の主張立証責任の所在が確定しているとはいえない状況にあります。また、人身傷害保険は、実損てん補という側面と、傷害保険という側面を併せ持っているため、未解決の問題が多く残されています。
主張、立証責任について言うと、その所在に関する争いが決着したといえる車両保険金の請求についても、事故類型毎に、どのような間接事実が重要になるかは今後に残された問題といえます。
迅速かつ親身な保険金の支払いとモラルリスクの排除は、いわば、車の両輪の関係にあります。
横浜みなとみらい法律事務所では、受傷疑義案件を含めた、いわゆるモラルリスク案件についても、積極的に取り組んでおります。