人事、労務管理
労務管理とは
従業員の雇用から退職までの一切の人事上の業務
労務管理とは、従業員の雇用から退職に至るまでの、一切の人事上の業務をいいます。
労務管理は、企業の利益に直結することですが、利益を最大化することにとらわれるあまり、労働基準法に代表される関係法規を遵守しなかったり、従業員の労働環境の確保のための措置を怠ったりすれば、法的なトラブルに発展するおそれがあるばかりでなく、場合によっては、社会的に大きな非難の対象にもなりうることは、昨今の報道を見ていても明らかです。
横浜みなとみらい法律事務所は、企業にとって、適法かつ適切な労務管理を行うことは、リスク・マネージメントの観点から、とても重要なことと考えています。
労務管理のポイント
労務管理においては、まずは、関係法規を十分に理解したうえで、従業員との間でどのようなトラブルが生じるおそれがあるか、あらゆるケースを想定しておくことが重要です。
特に、賃金をめぐる問題や、解雇に関する問題、セクハラ・パワハラの問題は、労務管理においては、頻出ともいえるトラブルですから、何らかの予防策を講じておくべきでしょう。
万が一、これらの問題をめぐって従業員とトラブルになり、労働基準監督署に駆け込まれたり、労働審判や訴訟を起こされたりすると、その対応には多大な労力が必要となるばかりか、最終的には、企業に対して厳しい判断がなされるケースも多く見られます。情報がインターネット上で拡散すれば、企業が被るダメージは計り知れないものになります。
こんな企業の方はご相談ください
労務管理は、従業員の雇用から退職に至るまでの一切の人事上の手続きに関わることですから、その争点も多岐にわたります。
- 勤務態度に問題のある社員がいるが、解雇することはできるのか。
- 労働組合から団体交渉を申し込まれたが、どのように対応すべきか。
- 従業員がうつになってしまったのだが、会社にも責任はあるのか。
- セクハラやパワハラに対して、どのような対策を講じるべきか。
- 残業代や退職金の請求を受けたが、支払う必要があるのか。
このようなお悩みを抱えている企業様や、そのほか労務管理に関するお悩みを抱えている企業様は、力を入れて取り組んでいる弁護士に、是非、ご相談ください。
解雇
解雇には、大きくわけて3つの種類があります。
- 普通解雇(例えば、無断欠勤など就業規則違反がある場合の解雇)
- 整理解雇(例えば、会社の経営不振による人員削減のための解雇)
- 懲戒解雇(例えば、従業員が犯罪やそれに類する悪質な行為を行った場合の解雇)
一般に、日本の労働法においては、従業員の権利が強く守られており、よほどのことがない限り、解雇は難しいと言われていますが、必要な要件を満たしている場合には、解雇という厳しい対応をとることもできます。
解雇が可能かどうか、難しい場合には、どの程度の懲戒、ないし、どのような対応が妥当なのかは、事案ごとにまさにケースバイケースですから、従業員の処遇についてお悩みの企業の方は、是非一度、お気軽にご相談ください。
セクハラ・パワハラ
セクハラやパワハラは、日本語でいうと、「嫌がらせ」を意味します。どのようなことをされたら、「嫌だ」と感じるかどうかは、人それぞれによるところでもあって、対策が難しい分野でもあります。
だからといって、対策を怠ったままでいると、従業員から、セクハラやパワハラによって精神のバランスを崩したとして、損害賠償など民事上の責任を厳しく追及されるおそれもあります。
セクハラやパワハラは、企業風土に関わる側面もあり、一朝一夕には対策を行うことは難しいかもしれませんが、適切な措置を講じていく必要がある問題です。
職場のハラスメントの防止については、昨今、厚生労働省が力を入れて取り組んでおり、パワーハラスメントの雇用管理上の措置義務について、中小事業主においても、2022年4月1日から義務化されます。事業主が雇用管理上講ずべき措置としては、厚生労働大臣が次の指針を示していますので、あなたの職場では大丈夫か、是非、ご確認ください。
- 事業主の方針の明確化及びその周知・啓発
- 相談(苦情を含む)に応じ、適切に対応するために必要な体制の整備
- 職場におけるハラスメントへの事後の迅速かつ適切な対応
- 職場におけるハラスメントの原因や背景となる要因を解消するための措置
- 併せて講ずべき措置(プライバシー保護、不利益取扱いの禁止等)
賃金・退職金
残業代を含む賃金体系や、昇級のルール、退職金支給の条件などは、予め雇用契約書や就業規則などに明記しておくことが、トラブルを未然に防止するために、まずは重要です。
しかしながら、雇用契約書や就業規則などの定めが、従業員に一方的に不利な内容である場合には、無効とされることもありますから、関係法規を踏まえて、適切な内容の定めをおく必要があります。
最近では、退職後に元従業員が会社に対して、残業代の請求をする事案が多く見られるようになりました。支払うべき残業代は支払わなければなりませんが、他方で、会社が支払う必要のない不当な残業代の請求があるのも事実です。関連する裁判例を検討のうえ、どのような範囲で残業代を支払うべきか、判断していく必要があります。
残業代請求とは
未払いの賃金を請求するもの
残業代請求事件は、未払いの賃金を請求するものであり、裁判所でも、労働審判を含む労働関係訴訟において、近年増加傾向にあります。
法定労働時間は、
- 1週につき、40時間
- 1日につき、8時間
と決められており、その枠を超過して行われる労働に対しては、通常の賃金に加えて、25%の割増賃金を支払う必要があります。
また、
- 週に1日の法定休日に行われる労働
のことを休日労働といい、休日労働に対しては、35%の割増賃金を支払う必要があります。
横浜みなとみらい法律事務所は、会社側としても、賃金の支払状況を精査のうえ、支払うべき残業代は、きちんと支払うことが、結局のところ、トラブルを小さくする方法と考え、アドバイスを行っています。
残業代の計算方法
深夜労働
22:00以降の深夜労働は、25%の深夜割増賃金の対象となります。
深夜労働に対する割増は、労働が深夜時間帯に行われることに着目した規制であり、先に述べた法定時間外労働や休日労働に対する割増とは趣旨が異なります。
例えば、
- 法定時間外労働が深夜労働と重なる場合には、50%の割増
- 休日労働が深夜労働と重なる場合には、60%の割増
となります。
なお、労働基準法の割増賃金規制は、強行法規的規制であり、労働者・使用者が任意に割増賃金を支払わないことを合意しても無効です。
残業代が支払われない場合
固定残業代の抗弁
残業代の請求に対し、会社側から、時間外労働に対しては、定額の手当を支給する等の手当をしているという相談をされる場合があります。
しかし、このようないわゆる固定残業代の合意は、基本給のうち時間外手当に当たる部分が明確に区分され、かつ、割増賃金との差額が出る場合には、その差額を支払っていなければ、無効となります。
なお、その場合、基本給全体が割増賃金の基礎金額となり、多額の残業代請求が認められることになりますので、ご注意ください。
管理監督者の抗弁
「管理監督者」だからという理由で、会社から、残業代が支払われていないケースもあります。
しかし、この「管理監督者」とは、労働条件の決定その他労務管理について経営者と一体的立場にある者をいい、名称にとらわれず、職務内容、責任と権限、勤務態様等に関する実態に即して判断されることになります。
また、時間外手当等が支給されない代わりに、管理職手当ないし役職手当等の特別手当により、その地位にふさわしい待遇が与えられていることも重要な要素となります。
「管理監督者」という言葉だけでは不十分ですので、ご確認いただければと思います。
残業代請求の時効
今般の民法改正により、残業代の請求権の時効が、2年から3年に伸張されました。
この3年の時効は、今後は5年に伸張されることも見込まれています。
退職金請求とは
退職金制度を設けるか否か、また、その支給範囲と支給条件をどのように設定するかについては法による直接の規制はなく、使用者の任意にゆだねられています。
ただ、退職金規程がなくとも、一定の基準により支給することが労使間での確立した慣行となっていること等を理由に、退職金請求が認められた事例もあります。
労使慣行等による支払義務が認められるか否かは、支給条件が明確で、使用者に支払義務があるということが当事者間の職場のルールとして認識されていたといえるか、具体的な金額が確定できるか、がポイントになります。